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「かかりつけアプリDoceo」に込めた想い

Doctorの語源であり、ラテン語で“教える”を意味するDoceo。
イメージしたのは、スマホの中にかかりつけがいる世界。
医療をみんなの手元に――。
そんな想いが込められたアプリの開発背景を、岡村竜治と木田康太郎のふたりが語ります。

偶然の出逢いがアプリ開発のきっかけに

岡村:木田との出逢いは2~3年ほど前、とあるバーで飲んでいた時でした。店に入ってきた木田がいきなりマスターに「今、悪いところはない?」と健康診断を始めたんです。私は医療業界で10年ほど仕事をしてきましたが、木田のような医師に会ったのは初めて。こんな医師がいるんだととても驚きました。

木田:私は昔からそんな感じでなんです。行きつけの店のマスターたちはみんな高齢。大なり小なり健康不安を抱えています。個人的に相談を受けることも多く、自分がわかることには答え、わからないことは専門医に聞いてフィードバック。受診する際は紹介状を書いて送るということを普段からしていました。みなさん気軽に連絡してくるんですよ。寿司屋の大将から「お客さんに味噌汁こぼしちゃったから診てよ」って急に電話を受けたり。私から救急に連絡を入れて、現地で救急車を「こっちです」と誘導したこともあります(笑)。

岡村:その頃私はちょうど独立したばかり。これからやりたいことを考えると医師のパートナーが必要で、まさに探していたところでした。木田の姿を見て「一緒にやるならこの人だ」とすぐに声をかけたんです。その時は木田のキャリアも何も知らない状態。でも私が惹かれたのは彼のキャリアではなかったので、だいぶ後になってから「すごい人だったんですね」と会話したのをよく覚えています。

木田:岡村から誘いを受けた時、まったく迷うことなくOKしました。それは私自身が医療の世界で何か新しいものを創りたいという想いがあったことはもちろん、彼とならそれができるだろうという確信にも似た気持ちがあったからです。

岡村:奇しくもその頃、新型コロナが流行し始め、「かかりつけ」の重要性が語られるようになりました。しかし今の日本で誰もが「かかりつけ」を持つことは難しい。開業医の界隈で長く仕事をしていたからわかるのですが、いくらニーズがあってもサービスに保険点数がつかない以上、そのような機能をクリニックで実現するのは厳しいのが現実です。

木田:そもそも開業しているクリニックのほとんどが特定の専門医で、アメリカでいうプライマリ・ケアができる医師は非常に少ない。良い悪いの話ではないんですが、事実日本の医師教育は高度医療、即ち専門医の育成にフォーカスされていて、プライマリ・ケアに関しては専門医に比べると教育が進んでいないんです。また日本では専門医の方が高く評価される傾向にあり、そこを目指す医師自体が少ないことなども影響しています。

岡村:そこで考えたのが、かかりつけを新たな形で実現することでした。私たちはそれを特定の人ではなくプロダクトで実現することを目標にしたんです。今、木田を頼っている人たちと同じような仕組み、安心感を国民全体に提供できないか――そこからこのアプリの開発がスタートしました。

木田:アプリの構想を聞いた時に私が思い出したのは、アメリカで虫歯になった時のことでした。日本では自分も周りも全員医師という環境でしたから、最適な専門医にすぐに相談できたんです。でもアメリカでは違いました。なんとなく選んだ歯科で、汗で椅子がびっしょりになるぐらい緊張して。その時初めて一般の患者さんと同じ環境に身を置き、周りに相談できる存在がいないことの不安を知ったんです。医師と患者さん、医療知識や情報の差を埋めるのは困難です。しかし少しでもその差を縮める努力はすべき。そのはじめの一歩としてDoceoが大きな役割を果たすかもしれないと思いました。

サービスの主役は病院であり医師

岡村:Doceoはあくまで裏方で、サービスの主役は病院であり医師。このふたつは医療の信頼の軸であり、まさに中心です。医師個人はもちろん、“この病院だから信頼できる”というものって絶対あると思うんです。だからこそ私たちは裏方に徹し、今まで一般には広く伝わっていない優秀な医師と信頼に足る病院がオンラインに出てきやすい世界を作る。病院・医師が展開する新しいオンラインサービスをDoceoで支援したいと思っているんです。今までの医療を作ってきたのは当然、病院であり医師です。であるならば、これからの医療を変えていくのも病院であり医師だと、私はそう思っています。

木田:私が医師としてまずこだわったのは、信頼性を担保すること。私は麻酔科医として多くの病院で仕事をしてきた経験から、優秀な医師を知っています。でも「この分野ならこの先生だよね」という情報は、これまで業界内で埋もれてしまっていました。そこで専門医の中でも“この人だったら”という医師に声をかけ、ユーザーが気軽にアクセスできる環境を実現しました。そしてDoceoではこのように所属先が明確な専門医(スペシャリスト)がみなさんの投稿に動画で答えています。これは他にはないサービスです。字で見たものと動画では、伝わってくるものが違います。この病院のこの医師が自分の質問に答えてくれている。それは匿名の医師が答えるものと比べ、信頼感が段違いだと思います。

岡村:今までは自覚症状が出てから病院に行き、そこで初めて医療との接点を持つことが当たり前でした。しかしDoceoを使うことで日常生活の中で病院や医師を知ることが可能になります。これまでにない形で医療との接点を作り、医療が私たちの日常に一歩寄り添ってくれたら、私たちの体験は大きく変わることになるかもしれません。

Doceoから医療が始まる、そんな未来へ

木田: Doceoはみなさんの投稿によって育っていくアプリです。いろいろなユーザーが投稿することで自分と同じ症状の人を発見し、参考になるものも出てくるでしょう。もちろん自分のことではなく、家族や友人のことでも構いません。どんどん投稿してみてください。コンテンツが成長していけば、やがて医療業界のクックパッドのようなものになっていくと思います。

岡村: 現在提供しているサービスはまだほんの一部。規制が多い業界ですから、どこまで考えていることを実現できるのかはわかりませんが、私は医療資本が自然とシェアされ、誰でも利用できる世界にすることを目標にしています。例えば「医師はロキソニン飲んでるの?」「無痛分娩って医療者は選択するの?」「この手術、自分が受けるなら誰に頼む?」というような、実は一番聞きたいけれどなかなか聞く機会がない。そんな素朴な疑問にも答えられるようにできたらと考えています。

木田: みなさんの健康を守るためにやりたいことはまだまだあります。父は私が医師になった後、末期がんになりました。身近に私という存在がいたにも関わらず、早期発見に繋げられなかった。そもそも自分の健康に興味がなかったり、何か事情があって相談できなければ、医師がそばにいても意味がありません。それはDoceoでも同じ。ですから私はこのサービスをもっと発展させて、おせっかいができるようにしたい。例えばDoceoを通じて検査をし、よくない数値が出たら受診の予約を入れるまで通知を繰り返す。必要なら手術や治療に最適な病院や専門医を紹介する。そこまでできれば医療を変えたと胸を張って言えるでしょうね。

岡村: 木田が言うようなサービスが実現できたら、これまで受動的だった医療が大きく変わるでしょう。患者が来てくれるのを待っていた医師たちが、もっと当たり前に日常に入り込んでくる。そんな世界まで行きつけたらいいですね。私のかかりつけはこのDoceoなんだと答えてもらえるような、このアプリから医療が始まるような、そんな未来を目指してサービスを展開していきたいと思っています。

取材・文/御堂うた

  • 岡村 竜治

    Wivil株式会社 代表取締役

    かかりつけアプリDoceo(ドケオ)

    企画・開発・運営

  • 木田 康太郎

    Wivil株式会社 メディカルチーム責任者

    現東京慈恵会医科大学附属病院/麻酔科

    准教授

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